千葉 税理士の自由な発想
政府見通しは「見通し」というより、政府の「努力目標」という性格も持っている。
また、通産省などは産業振興の立場から、常に景気のいい伸び率を前提にする。 これに対して、税収不足の場合などを想定する受け身の大蔵省は、伸び率を低めに見積もる傾向があり、最後は両省の間に立つ経企庁が、政治的配慮も加えて中間の線で決着させるという事態も少なくない。
このほか、対外的配慮も加味される。 海外から内需拡大を求められ、日本政府も対外不均衡是正のために内需を振興すると公約している場合、低めの見通しを出すわけにいかない。
政府見通しというのも、けっこうドロドロ。 政府見通しに基づき、各省庁は、それぞれの新年度予算や事業計画を決める。
たとえば、大蔵省はGDPが低ければ企業や個人からの税収も低くなるから、大盤振る舞いの予算を組まないよう締めてかかる。 外務省は対GNP比をもとに、政府開発援助(ODA)の額を調整する。
もっとも、政府見通しと予算編成は、現実にはほぼ同時進行で進むため、成長予想が決まったからといって、予算規模などが大きく変更されるという事態はほとんどない。 一般に、好景気で経済が過熱していると、反動で不況になった時の落ち込み方がひどくなるので、政府や日銀などの政策当局は、公にした次元で決まるものである。
釦共事業の財政を抑制したり、公定歩合を通じて金利を高めに設定し、景気を冷やして長続きさせる政策をとる。 逆に、不況の時は財政を出動して公共事業を盛んにしたり、減税して消費を盛り返したり、金利を低くして企業が資金調達をしやすくする。
こうした毎年の経済見通しとは別に、政府は五年単位の中期経済計画も作成している。 これは、毎年の経済見通しのように、必要とされるものではないが、政権交代などによって新しい政府が登場すると、新政府の中期ビジョンを国民に示すため作成されるケースが多い。
戦後日本の最初の五カ年計画は、一九五五年の「経済自立五カ年計画」(計画期間五六〜六○年)であり、その後は九五年の「構造改革のための経済社会計画、活力ある経済・安心できるくらし」(同九五〜二○○○年)。 この間、二の中期計画が作られており、今のところ全部で一三にのぼっている。
経済計画の中で歴史的に有名なのは、池田内閣が六○年に打ち出した「国民所得倍増計画」(同六一〜七○年)。 この期間に国民の平均所得を二倍に上げるという野心的な内容で、計画をプチ上げた当初、だれもが疑わしい目で見ていた。
ところが、実質一○%台の成長を続けた結果、事実上の所得倍増を実現したのである。 高度成長期ならではの話で、日本が豊かになる大きなステップとなった。
また、竹下内閣が八八年に作成した「経済運営五カ年計画、世界とともに生きる日本」(同八八〜九二年)が話題を呼んだ。 「前川リポト」(二四八頁参照)を下敷きに、内需拡大と対外黒字削減を目指したこの計画は、折からの「バブル景気」に乗って順風満帆。
輸入は拡大して経常黒字は激減し、九○年度は対GNP比一・二%とピク時の半分以下になったのである。 ところが、バブル崩壊で景気は大きくダウン、最後は深刻な「平成不況」を招いてしまった。
こうした中期計画を作成するのも、中心は経済企画庁である。 まず、経済学者、エコノミースト、評論家、財界人らの有識者を集めた審議会を設け、この場で経済社会のあるべき姿を議論して全体像を描き、個別に具体的な予想値、目標値を決める。
ここでも注目されるのは、期間中の実質経済成長率だが、過去の計画値と実績値を比べる限り、当たらなかった計画の方が多い。 過去の中期計画を並べると、各時代ごとの特徴がはっきり表れている。
五五年の「経済自立五カ年計画」の目的は、戦後日本の再建を第一にしているため、「経済の自立、完全雇用」があがっている。 これに対して八八年の「経済運営五カ年計画」では、「大幅な対外不均衡の是正と世界への貢献」が大目標である。
九五年の「構造改革のための経済社会計画」になると、日本経済の活力再生を最大目標にしている。 公定歩合、金融操作の役割は終わった。
景気と金利は、切っても切れない関係にある。 金利は景気の実態を映す鏡ともいわれ、景気動向を敏感に反映して、上がったり下がったりする。
しかし、その逆に、金利を動かすことで景気に影響を与えることもできる。 金利を意図的に変えることによって景気をコントロルしようという政府が、長らく代表選手として起用してきたのが日本銀行の公定歩合操作だった。
公定歩合とは、簡単にいうと、日本銀行が一般の市中銀行にお金を貸し出す際の基準金利のこと。 日銀は「銀行の銀行」といわれるだけに、日銀から借りるお金の金利が高くなれば、市中銀行も顧客に貸し出す金利を、それにスライドさせて高くしなければ儲からない。
このように公定歩合は、すべての金利の総元締めのような性格を持っている。 ただ、日銀は一九九六年以降、日々の金融市場調節のための日銀貸し出しを原則として中止し、後で詳しく説明するが、金融政策の重点操作目標を、短期金融市場の指標となっている翌日物コルレートに移した。
このため、公定歩合は現在では、日銀の政策意図を示す「アナウンスメント効果」とし、公定歩合と景気は、どう連動するのだろうか。 単純にいうと、景気の悪い時には公定歩合を下げ、景気の良い時には上げる、ということになる。
たとえば、景気が悪くて、製品を作ってもさっぱり売れないとする。 企業は、工場の新設などの投資を先延ばしして、ひたすら景気が回復するのを待とうとする。
すると、工作機械メカや建設会社などへの発注が減り、機械や建設資材の材料になる鉄鋼生産などへも影響が出る。 企業の業績が悪くなれば、従業員のボーナスなどの所得も減り、買い控えが起きて製品がさらに売れなくなるという、景気の悪循環の意味合いが強くなっている。
に陥ってしまう。 ところが、この時、日本銀行が公定歩合を下げて金利引き下げムドを高め、企業が銀行から安い金利でお金を借りられるようになったらどうなるか。
ある自動車メカが銀行から一○○億円を借りて、新しい自動車工場を作る計画があったとする。 この時の金利が年六%だとすると(今は歴史的な超低金利時代だが、九○年以前には六%を超す金利は珍しくなかった)、この会社は単純計算で年に六億円の金利負担をしなければならない。
だが、金利が四%に下がれば、金利負担は年に四億円となり、今までよりも年に二億円少ない負担ですむ。 これが複利で何年も続けば、その差は無視できない大きな金額になる。
これ以上どんどん金利が下がっていく状況もっとも、金利を下げるのは景気が良くない時。 不況があまりに深刻になると、金利が下がってお金を消費に回すのは、収入が安定していて、将来の不安も小さい層に限られるようになる。
年金生活で、若い時代に貯めたお金の利息を生活費の足しにしているお年寄りなどは、金利が低下すると利息収入が減少するため、かえって消費を手控えかねない。 さらに預貯金などの個人資産が増え、一三一四兆円(九九年三月末)にも上る今の日本では、金利低下による利息収入減少の影響は予想以上に大きく、消費を冷え込ませる原因になるとの意見も強く主張されている。
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このほか、対外的配慮も加味される。 海外から内需拡大を求められ、日本政府も対外不均衡是正のために内需を振興すると公約している場合、低めの見通しを出すわけにいかない。
政府見通しというのも、けっこうドロドロ。 政府見通しに基づき、各省庁は、それぞれの新年度予算や事業計画を決める。
たとえば、大蔵省はGDPが低ければ企業や個人からの税収も低くなるから、大盤振る舞いの予算を組まないよう締めてかかる。 外務省は対GNP比をもとに、政府開発援助(ODA)の額を調整する。
もっとも、政府見通しと予算編成は、現実にはほぼ同時進行で進むため、成長予想が決まったからといって、予算規模などが大きく変更されるという事態はほとんどない。 一般に、好景気で経済が過熱していると、反動で不況になった時の落ち込み方がひどくなるので、政府や日銀などの政策当局は、公にした次元で決まるものである。
釦共事業の財政を抑制したり、公定歩合を通じて金利を高めに設定し、景気を冷やして長続きさせる政策をとる。 逆に、不況の時は財政を出動して公共事業を盛んにしたり、減税して消費を盛り返したり、金利を低くして企業が資金調達をしやすくする。
こうした毎年の経済見通しとは別に、政府は五年単位の中期経済計画も作成している。 これは、毎年の経済見通しのように、必要とされるものではないが、政権交代などによって新しい政府が登場すると、新政府の中期ビジョンを国民に示すため作成されるケースが多い。
戦後日本の最初の五カ年計画は、一九五五年の「経済自立五カ年計画」(計画期間五六〜六○年)であり、その後は九五年の「構造改革のための経済社会計画、活力ある経済・安心できるくらし」(同九五〜二○○○年)。 この間、二の中期計画が作られており、今のところ全部で一三にのぼっている。
経済計画の中で歴史的に有名なのは、池田内閣が六○年に打ち出した「国民所得倍増計画」(同六一〜七○年)。 この期間に国民の平均所得を二倍に上げるという野心的な内容で、計画をプチ上げた当初、だれもが疑わしい目で見ていた。
ところが、実質一○%台の成長を続けた結果、事実上の所得倍増を実現したのである。 高度成長期ならではの話で、日本が豊かになる大きなステップとなった。
また、竹下内閣が八八年に作成した「経済運営五カ年計画、世界とともに生きる日本」(同八八〜九二年)が話題を呼んだ。 「前川リポト」(二四八頁参照)を下敷きに、内需拡大と対外黒字削減を目指したこの計画は、折からの「バブル景気」に乗って順風満帆。
輸入は拡大して経常黒字は激減し、九○年度は対GNP比一・二%とピク時の半分以下になったのである。 ところが、バブル崩壊で景気は大きくダウン、最後は深刻な「平成不況」を招いてしまった。
こうした中期計画を作成するのも、中心は経済企画庁である。 まず、経済学者、エコノミースト、評論家、財界人らの有識者を集めた審議会を設け、この場で経済社会のあるべき姿を議論して全体像を描き、個別に具体的な予想値、目標値を決める。
ここでも注目されるのは、期間中の実質経済成長率だが、過去の計画値と実績値を比べる限り、当たらなかった計画の方が多い。 過去の中期計画を並べると、各時代ごとの特徴がはっきり表れている。
五五年の「経済自立五カ年計画」の目的は、戦後日本の再建を第一にしているため、「経済の自立、完全雇用」があがっている。 これに対して八八年の「経済運営五カ年計画」では、「大幅な対外不均衡の是正と世界への貢献」が大目標である。
九五年の「構造改革のための経済社会計画」になると、日本経済の活力再生を最大目標にしている。 公定歩合、金融操作の役割は終わった。
景気と金利は、切っても切れない関係にある。 金利は景気の実態を映す鏡ともいわれ、景気動向を敏感に反映して、上がったり下がったりする。
しかし、その逆に、金利を動かすことで景気に影響を与えることもできる。 金利を意図的に変えることによって景気をコントロルしようという政府が、長らく代表選手として起用してきたのが日本銀行の公定歩合操作だった。
公定歩合とは、簡単にいうと、日本銀行が一般の市中銀行にお金を貸し出す際の基準金利のこと。 日銀は「銀行の銀行」といわれるだけに、日銀から借りるお金の金利が高くなれば、市中銀行も顧客に貸し出す金利を、それにスライドさせて高くしなければ儲からない。
このように公定歩合は、すべての金利の総元締めのような性格を持っている。 ただ、日銀は一九九六年以降、日々の金融市場調節のための日銀貸し出しを原則として中止し、後で詳しく説明するが、金融政策の重点操作目標を、短期金融市場の指標となっている翌日物コルレートに移した。
このため、公定歩合は現在では、日銀の政策意図を示す「アナウンスメント効果」とし、公定歩合と景気は、どう連動するのだろうか。 単純にいうと、景気の悪い時には公定歩合を下げ、景気の良い時には上げる、ということになる。
たとえば、景気が悪くて、製品を作ってもさっぱり売れないとする。 企業は、工場の新設などの投資を先延ばしして、ひたすら景気が回復するのを待とうとする。
すると、工作機械メカや建設会社などへの発注が減り、機械や建設資材の材料になる鉄鋼生産などへも影響が出る。 企業の業績が悪くなれば、従業員のボーナスなどの所得も減り、買い控えが起きて製品がさらに売れなくなるという、景気の悪循環の意味合いが強くなっている。
に陥ってしまう。 ところが、この時、日本銀行が公定歩合を下げて金利引き下げムドを高め、企業が銀行から安い金利でお金を借りられるようになったらどうなるか。
ある自動車メカが銀行から一○○億円を借りて、新しい自動車工場を作る計画があったとする。 この時の金利が年六%だとすると(今は歴史的な超低金利時代だが、九○年以前には六%を超す金利は珍しくなかった)、この会社は単純計算で年に六億円の金利負担をしなければならない。
だが、金利が四%に下がれば、金利負担は年に四億円となり、今までよりも年に二億円少ない負担ですむ。 これが複利で何年も続けば、その差は無視できない大きな金額になる。
これ以上どんどん金利が下がっていく状況もっとも、金利を下げるのは景気が良くない時。 不況があまりに深刻になると、金利が下がってお金を消費に回すのは、収入が安定していて、将来の不安も小さい層に限られるようになる。
年金生活で、若い時代に貯めたお金の利息を生活費の足しにしているお年寄りなどは、金利が低下すると利息収入が減少するため、かえって消費を手控えかねない。 さらに預貯金などの個人資産が増え、一三一四兆円(九九年三月末)にも上る今の日本では、金利低下による利息収入減少の影響は予想以上に大きく、消費を冷え込ませる原因になるとの意見も強く主張されている。
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